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日商簿記の合格率が低い理由、試験の難易度を分析【合格率・受験率の推移総まとめ】
日商簿記の資格試験の等級は、初級~1級まで存在しますが一般的な資格試験に比べて合格率が低くなる傾向にあります。今回は、各資格等級別の合格率と受験者数の推移を交えながら、何故合格率が低くなってしまうのか傾向分析を実施したいと思います。
この記事の目次
日商簿記と相性の良い資格の合格率
簿記の合格率を相対的に比較するための目安として、簿記と相性が良くネームバリューの高い資格の合格率を参考に整理しておきます。どの資格も皆さん一度は耳にしたことがあるものばかりだと思いますが、これらの合格率と比較しながら簿記の合格率を確認すると分かりやすいと思います。
■簿記と相性が良い資格の直近合格率一覧 | |||
資格名 | 平均合格率 | ||
税理士 | 18.52% | ||
公認会計士 | 10.54% | ||
社労士 | 6.80% | ||
宅建士 | 15.91% | ||
FP3級 学科(日本FP協会) | 86.31% | ||
FP3級 実技(日本FP協会) | 83.65% | ||
FP2級 学科(日本FP協会) | 47.13% | ||
FP2級 実技(日本FP協会) | 62.38% | ||
FP1級 学科(きんざい) | 12.76% | ||
補足 | |||
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日商簿記3級の合格率と受験率の推移
初学者向けの入門資格である簿記3級の合格率・受験者数の推移を分析しています。初学者向けなので楽勝!と言うイメージを持っておられる方も多いことでしょうけど、果たしてイメージそのままの結果となっているのでしょうか?
日商簿記3級の合格率の推移
日商簿記3級の合格率は、平均大体40%程度となります。初級者向けの資格であれば平均して60%以上の合格率位はあっても良さそうなものなのですが、やや低めの合格率ですね。
合格率のグラフは結構ギザギザ上下している事が見て取れます。簿記3級を受験される方の多くは、初心者に相当する方々が大半を占めていますので、出題内容によって大きく合格率が上下する事を示しています。
極端に合格率が上下した後は、その後40%程度の合格率に収束するように推移しています。大きく合格率が下落した後は、一度不合格になった方が再度受験しますので合格率の回復に大きく寄与していると考えられます。
一概に結論付ける事は出来ませんが、合格率が平均を大きく逸脱した後は出題内容に調整が入っていると言うのは経験上少なからずあると考えています。まあ、初学者の心をへし折ってしまっては後に続きませんからね(^^;)。
日商簿記3級の受験者数・受験率の推移
簿記3級の受験者数は上昇を続けていたのですが、東日本大震災を皮切りに緩やかな減少傾向に転じています。大規模地震が社会的閉塞感を助長した形と言えそうですね。消費税率UPと言う大きなイベントを2回消化しつつ、やや下げ基調を辿っています。
各開催回ごとの受験者数が80,000人クラスというのは、日本の資格試験としては上位に位置しており、景気動向に左右されずらい安定した資格と捉えている方が多いと分析出来ると思います。
しかし直近数年で言いますと、例のコロナ渦による試験の中止もあり「ホントに試験あるの?」という方が学習開始を控えたり、見通しが立つまで受験を控えたりした事で、受験者数の減少に拍車が掛かったと分析出来ます。
更に、2020年12月からはネット試験が開始されましたので、多くの方がそちらへ流れた事によって従来型の統一試験の受験者数は大きく落ちむ形となりました。
続いて、受験者のやる気を示す受験率の推移ですが概ね75%前後で推移しています。2016年(平成28年)試験から出題区分の大幅変更が実施されたのですが、簿記3級に関してはそこまで大きな影響がなかったためか、途中離脱で諦めた方が続出したような傾向はみられません。
最近は受験率が伸びていますね、これはコロナ渦の試験の中止の反動で伸びたと考えられます。この傾向は、簿記以外の資格試験でも見られます。まあ、そりゃせっかく勉強してきたのに中止になったのなら、再開されたらこぞって受験しますよね。
日商簿記3級は1~2週間で合格する程簡単?本当なの?
簿記3級は1~2週間で合格する程簡単って聞いたけど本当なのかな?パット見合格率は低いみたいだけど・・・。
上記のご意見が散見されますが、これはあくまで会計・簿記・経済に関わる各種学校の卒業者や実務経験者の方に限った話です。簿記に全く縁の無い方が短期で合格できるか?という問に対する答えはNOと自信を持って言えます。
管理人は確率・統計学分野の出身なので計算には割と自信がありましたが、幾ら計算(算数)ができようとも簿記における仕訳の仕方や勘定項目の多さには最初は戸惑いを覚えましたし、考え方に慣れるのに始めは苦労すると申し上げておきます。
受験率は70%半ばで推移しているものの、この中で簿記の考え方に十分頭が順応しきった方と言うのはおおくないと考えるべきです。そのため少し問題が難化すると対応出来ずに大きく合格率が下落する形となります。
日商簿記の試験(※従来型の統一試験の場合)はマークシート形式ではなく記述式となります。そのため、途中計算ミスや転記ミスをすると1問根こそぎ落としてしまう結果となります。たまたま正解を引いたという運に左右されにくいので、合格率も低くなってしまうわけです。
また、受験料2,850円で年3回と言う受験ハードルの低さから「とりあえず受けておこう」と言う記念受験者を多く生む要因になっていますので、これも合格率を低くする大きな要因となっています。
簿記3級は絶対評価なので、70%以上得点出来れば合格となります。しっかりと実力を身に着けた方は、出題内容と十分闘う事ができると思いますので、実のところ40%という低めの合格率に臆する事は全くないと考えます。
まとめると、簿記3級の合格率は一見低いですがこれは受験者の水準にバラツキがあるためで、真面目に学習した人にとっては合格率はあまり意識する必要はないと言えます。
日商簿記3級ネット試験の合格率は?
■3級ネット試験の統計情報 | |||
期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2020年12月~ 2021年3月 |
58,700名 | 24,043名 | 41.0% |
2021年4月~ 2022年3月 |
206,149名 | 84,564名 | 41.0% |
商工会議所のネット試験の統計情報です。ものすごい人数が受験している事がわかりますね、統一試験で減少した分の受験者の多くがネット試験に流れていると言ってよいかと思います。
合格率は従来の統一試験と大差ないですが、日程の調整がききやすく自分のペースで勉強・受験できるのは相当魅力的という事でしょうね。更に、ネット試験は仕訳問題の出題形式が、完全記述による解答から選択式(プルダウン方式)となりますので、パソコン慣れしている人はこの点も魅力的に映ると思います。
日商簿記2級の合格率と受験率の推移
日商簿記2級の合格率と受験者数の推移を分析しています。中級者向けの資格だけに3級に比べて合格率も低くなっている事が予想されます。
日商簿記2級の合格率の推移
簿記2級の合格率30%というのは、日本に数ある中級者向けの資格の合格率としては平均よりやや下の値となっています。出題範囲が広く問題も難しくなっており、何と言っても工業簿記が出題範囲に加わる事が更に合格率を押し下げています。
簿記3級の合格率が40%程度なので、あまり変わらない印象を受けるかもしれません。しかし先程述べたように、3級の受験者の実力はかなりバラツキがあるがため低く出ており、ある程度の知識を持った層が受験する2級の合格率と単純に比べる事は出来ません。
2016年6月以降段階的に大幅な出題範囲の変更が実施され合格率のグラフは大荒れの様相を呈しています。当時はこの状況が落ち着くまで見送りしていた方が多数いらっしゃったと思います。
過去の会計基準の見直し等で試験範囲的に最も影響を受けているのが、実践的資格等級である日商簿記2級と言えます。そのため、開催毎に見直しが入って合格率にバラツキが出るのはある程度致し方無い部分だと思いますが、それにしても当たり外れが大きいですね。
執筆時点で正確な数値は出ていないので掲載出来ていないですが、156回・157回試験は難化しすぎた連結会計などを背景に合格率が大幅に下がったため、SNS・ネット界隈は大荒れになりました。総合的に見ると近年は難化傾向にあると言えるでしょう。
日商簿記2級の受験者数・受験率の推移
3級同様に受験者・実受験者数は下落傾向を示していますが、2016年6月以降の出題範囲変更前に滑りこみ受験者が多数出た事が記録されています。「受けようかな~どうしようかな~」と悩んでいた方々のお尻を叩いた結果ですね。
この時約70,000人もの方が受験されていますので、潜在的な簿記2級の受験者は多数いる事が分かります。簿記2級もネット試験が開始されましたので、統一試験の受験者数は大きく落ちむ形となりました。
受験率のグラフを見ると2016年6月以降の出題範囲の変更を勘案して、しばらくの間は受験をスキップもとい諦めた方が多数出たと言う事が明白です。しかし、落ち着いてきてからは受験率は元の水準に戻っている事が分かります。
最近のグラフの傾向は簿記3級とほぼ同じですね。受験率が伸びているのは、コロナ渦の試験の中止の反動で伸びたと考えられます。
日商簿記2級ネット試験の合格率は?
■2級ネット試験の統計情報 | |||
期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2020年12月~ 2021年3月 |
29,043名 | 13,525名 | 46.6% |
2021年4月~ 2022年3月 |
106,833名 | 40,713名 | 38.1% |
ネット試験に多くの方が流れている事がわかりますね、近年の統一試験の比べるとネット試験の方が合格率が確かに高いので、そちらに流れる方が多いのも納得できますね。
これは、PC操作を伴うためあまり複雑な問題が出しづらいという背景と、自分のタイミングで受験できるので、合格率が高く出やすいという複合的な要因があると考えます。
ただし「同じ簿記2級の試験なのに差を付けてどうするんだ!」ということで出来るだけ両者を近づける方向で動いているようですから、ネット試験の高めの合格率を享受できるのもあとわずか、と言えるかもしれませんね。
簿記2級の合格率が低い理由
簿記2級の合格率が低い理由は、3級に比べて出題範囲が広く問題が難化するという単純な理由は当然ですが、初学者向けの3級を飛ばして実践資格である2級をいきなり受験した方々が、まったく歯が立たずに玉砕しているケースも多いと考えます。
また、新しい学習範囲である「工業簿記」の取扱い方(学習方法)による所が大きいと考えています。
■簿記2級の配点予想 | |||
範囲 | 問題 | 配点 | 出題内容 |
商業簿記 | 1 | 20点 |
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2 | 20点 |
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3 | 20点 |
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工業簿記 | 4 | 28点 |
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5 | 12点 |
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合計 | 100点 |
簿記2級は全体で70%以上得点することで合格ですが、上記の通り「工業簿記」が40%を占めています。工業簿記を疎かにしていると、商業簿記で幾ら得点が稼げても合格は出来ませんし、学習順序を誤ってしまうと商業簿記も工業簿記どっちつかずの実力で本試験に挑むことになってしまいます。
簿記の3級で商業簿記の基礎を叩き込んでいると言う前提の元に言うと、先に新しい試験範囲である工業簿記を学習してから商業簿記の学習に移ったほうが予実管理もやりやすく、挫折しにくいと考えます。
簿記2級の「商業簿記」は、3級に比べて仕訳・勘定項目・論点など幅が広がる事は言うまでも無いのですが、簿記3級で基礎を学んだ方にとっては「意味不明」と言う状態に陥る事は少ないと思いますので、簡単に表現すると知識の厚みを増やす作業がメインとなります。
対して「工業簿記」は、ご存知の通り我々日常の感覚と扱う範囲が少しずれているために新たな知識を入れると言った側面が強くなります。そのため思わぬ進捗の遅滞が発生する事もあり、それなりに時間を要します。
通常、試験日程から逆算して「何時頃」から学習を始るのかをスケジューリングするわけですが、「工業簿記」に関しては、後回しにすると十分な得点が出来ず全体として不合格になってしまうリスクがあると考えます。
スケジュール通りに行かないリスクを極力排除するために先に「工業簿記」を片づけてしまおうと言う訳です。この方法は、様々な資格講座やテキストで言われている一般的セオリーとなりますが、管理人の個人的な感想からも効率的で先の見通しが立てやすい学習方法と言えます。
更に、商業簿記に比べて工業簿記は出題パターンが多くないため、得点源として機能しますから先にしっかり押さえておくと合格基準にグッと近づく事が出来ます。
日商簿記1級の合格率と受験率の推移
最後に日商簿記最高難易度である1級の合格率・受験率を見ていきましょう。
日商簿記1級の合格率の推移
「極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められる」と商工会議所のHPに記載のある通り、高難易度資格である事をうかがい知る事が出来ます。
合格率は平均10%程度と高難易度である事は疑いようがありませんから、学習範囲の広さや出題難易度も相まって、完全独学での合格は非常に厳しいラインとなってくるでしょう。
受験者数は緩やかに減少傾向を示しています。少子化に伴う現役世代の減少を勘案すると、転職・就職に有利な3級・2級の受験者数はある程度は維持されていますが、取得に時間の掛かる1級については、コスパ的にそこまで重要視されないというマインドが働いている結果と分析しています。
また、日商簿記1級の合格によって税理士の受験資格を得ることが出来るわけですが、受験資格を得るだけならば全経簿記の上級の方が合格率が高いためそちらへ受験者が流れていると言った事情も少なからずあると考えます。
簿記1級の受験率は、ほぼ横ばいとなっています。155回が中止になった関係で、156回の受験率が跳ね上がっていますね。
簿記1級の合格率が低い理由
簿記1級は、合格率で見ると公認会計士・社労士・宅建士・FP1級に匹敵するほど高難易度資格となっています。また、3級・2級に比べて10%前後で比較的合格率が安定していると言うのが特徴です。
これは、税理士や公認会計士を目指す方が受験されているので合格率が安定しているという意見と、実は相対評価によって合格率10%程度になるように調整が入っているのでは?と言う意見も見受けられます。
上記については納得する部分も多々あるのですが、いかんせん予測なのでもう少し実態に則したデータとして以下 の記事で学習時間の目安を記載していますので、簿記1級がどれほど難関資格であるかを理解するための目安としてご一読頂ければと思います。
日商簿記初級の合格率と受験率の推移
日商簿記初級は以前「4級」と呼ばれていましたが、2017年04月以降はネット試験に変更されると同時に「初級」に変わっています。
日商簿記初級(旧4級)の合格率の推移
40%程度の合格率なので、簿記3級の合格率とあまり変わらない難易度であると言えます。ただし、後述している受験者数を見るに圧倒的に受験者数が少ないため、記念受験者やお試し受験者が多発していると考えられますから、合格率の実態はもう少し高いはずです。
2017年04月以降の試験はネット試験に変更となっていますので、以下の通り年度毎の統計値が示されています。
期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2017年4月1日~ 2018年3月31日 |
4,284名 | 2,545名 | 59.4% |
2018年4月1日~ 2019年3月31日 |
4,182名 | 2,421名 | 57.9% |
2019年4月1日~ 2020年3月31日 |
4,167名 | 2,243名 | 53.8% |
2020年4月1日~ 2021年3月31日 |
3,988名 | 2,516名 | 63.1% |
2021年4月1日~ 2022年3月31日 |
3,644名 | 2,341名 | 64.2% |
日商簿記4級の受験者数・受験率の推移
2016・2017年頃の受験者数は年度毎でいうと2,000人を下回る状態が続いており、知名度が上で学習範囲もかぶっている簿記3級にほとんどの受験者が流れてしまっている事を物語っていますね。
とまあ、簿記4級は3級の劣化版と言う位置づけになってしまっていたわけですが、簿記初級からは以下のように目的を刷新しており、よりリアルタイム性を求めている企業のニーズにあうようにインターネット試験に変更されています。
簿記入門者向けの試験であることに変わりは無いと思いますが、インターネット試験にする事で門戸を広げ、広く簿記の魅力を知ってもらう方針へ転換した訳ですね。これにより、受験者数も回復しています。
今までの簿記4級の要旨 |
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生まれ変わった簿記初級の要旨 |
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日商簿記初級を受けるメリットはあるの?
簿記初級は入門編に位置しているのですが、簿記の基本用語や複式簿記の仕組みを理解し業務に利活用することができる事を要旨としていますので、ネットでお手軽に初級を受験、なんて安易に考えていると簡単に不合格になります。
世間的な認知度は今ひとつであることから、初学者はこぞって簿記3級からスタートしてしまう傾向にありますから、知名度・権威性的にも個人が初級を受けるメリットはあまり無いように感じます。
対して、教育機関や企業にとっては生徒や社員の実力を測り継続的に教育を進める上で、リアルタイム性が高いネット試験に生まれ変わった初級は、メリットがある資格等級であると言えますし、3級と上手く棲み分け出来ていると言えそうです。
日商簿記の合格率が低い理由、総まとめ
役に立ちそうな資格なので調査してみたけど、合格率が低いので諦めてしまう・・・。これは、とってももったいない話だと思います。
感覚ではなく統計上の数値として分かりやすい値が示されてしまうと、信じてしまうのは致し方ないことですが、その数値が妥当であるかを分析する事は大切です。日商簿記は受験条件が無いため、どのような方でも受験出来てしまいますから、総じて合格率が低く出てしまう結果となっています。
他資格と比較した時に「何だか合格率が低いなあ、難しそう」と言う感覚はあまりアテにならないと言えますので、簿記初学者の方は、一度資格講座やテキストの問題や解説を斜め読みしてみる事をおすすめいたします。
簿記は、基本的な算数が出来れば全ての出題内容にセオリーが存在しますので、数をこなせば慣れる事が出来ます。如何に沢山のパターンに触れて、引き出しをどれだけ持っているかが鍵になると考えますので、70%以上の正答率を維持できるように過去問等でしっかりと経験を蓄積する事が合格への近道です。
独学の方は質の高いインプット・アウトプットを行う事が出来る参考書が欠かせないと思いいます。当サイトでは以下の記事でおすすめのテキスト・参考書をまとめていますので、是非参考にして頂きたいと思います。
また、独学で今ひとつ思わしい結果が出ていない方は資格講座も選択肢として考えても良いと思います。全国平均を大きく上回る合格率を達成している資格講座もありますので、受講を検討して見ては如何でしょうか。